病態
前立腺に生じる上皮性悪性腫療で大部分が線房細胞由来の腺癌です
前立腺の辺縁領域に好発し,男性ホルモン依存性に増殖する性質をもちます。
50歳以上の男性に好発し、年間約9万人が罹患していると言われています。
症状としては、初期は無症状であることが多く、進行してから排尿障害や血尿などの症状が現れてきます。
また前立腺がんは骨転移しやすく、特に造骨性骨転移をであることが多いです。
(溶解性骨転移が混在することも多いです)
骨転移の順番は、病巣→腰椎→骨盤全体→大腿骨の流れです
診断から治療の流れ
前立腺癌は症状が現れたときには進行している可能性が高いため、症状が出ない早期にPSAを行い、
前立腺癌を発見することが重要です。
※PSA:血液検査で前立腺特異抗原の特異度を高めるために提唱されている腫瘍マーカー
そのため50歳以上の男性に対して検診などでPSA検査を実施してPSA値が4ng/mL以上の場合、詳細な診断から治療へと進んでいきます。(確定診断には針生検が必要となります)
治療
前立腺がんの治療は、がんのステージ、リスク分類(悪性度の目安)、年齢を考慮して決定します。
手術療法
- 前立腺と精嚢、必要に応じてリンパ節も取り除く
- 開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術がある
- 近年はロボット支援下での手術が多い
- 手術後に高い割合で尿漏れや勃起障害が生じる
- 転移の無い前立腺がんで、かつ高齢でない場合に適応になる場合が多い
放射線療法
- 外照射療法と小線源療法(組織内照射療法)がある
- 外照射療法:対外から放射線を当てる方法
- 小線源療法:米粒ほどのシード線源を50~100個ほど埋め込む方法
- 限局癌に対して手術療法と同程度の治療成績が期待できる
ホルモン療法
- アンドロゲン(男性ホルモン)を抑える方法
- 前立腺癌の成長に必要なアンドロゲンを抑えることで癌の発育を抑制する
- 適応となるのは転移がある場合、根治的療法の補助・併用療法として行う場合、根治的療法が施行できない場合など
化学療法
- 抗がん剤を用いた療法
- ホルモン療法の効果がない場合に適応になる
手術治療後の合併症
前立腺摘出手術後の主な合併症は、腹圧性尿失禁、性機能障害、出血の3つです。
男性は尿道括約筋と前立腺の二つの機能により排尿コントロールをしていますが、前立腺を摘出すると尿道括約筋のみで排尿コントロールを行わなくてはならないため、尿漏れを生じる可能性が高いです。
さらに前立腺癌は前立腺尖部に発生しやすく、この場合は癌を切除するために尿道括約筋を前立腺尖部から引きはがすような操作が必要になります。そのため尿道括約筋に物理的な侵襲が生じて尿漏れを助長してしまいます。
手術後に尿失禁が起こる確率は約50%とされており、手術から3か月経過すると約30%まで低下します。そして1年経過するとその割合は数%に減少します。
リハビリプログラム
前立腺癌のリハビリは可能であれば術前から介入していくことが望ましいです。
術後合併症の尿失禁に対しては骨盤底筋群トレーニングが非常に重要なリハビリであり、術前からトレーニングを指導・実施しておくことで術後の尿失禁予防に効果が期待できます。
筆者が勤務している病院で採用している骨盤底筋群トレーニングを簡単に紹介します。
(基本的に骨盤底筋群トレーニングは術後尿カテーテルを抜去してから開始しています)
患者さんへの説明は「お尻の穴を閉めるように力を入れてください」また「おしっこを途中で止めるように力を入れてください」と声かけをしてから始めます。
①1秒の収縮を50回実施
→咳やくしゃみなどによる尿失禁を防ぐために、瞬間的に収縮を入れる目的
②3~5秒の収縮を50回実施
→尿意を感じてからトイレまで我慢するために持続的な収縮を入れる目的
上記に2つを1日で50回ずつ、計100回/日を自主練習で実施していただくようにお伝えしています。
自主練習する際は、背臥位、座位、立位のどれでも可能です。
それ以外にも術後の廃用予防の運動療法を疼痛に応じて実施していきます。
参考
尿失禁になってもあわてずに 体操や手術であきらめない | がん …
前立腺がんのロボット手術と合併症-尿漏れや性機能障害などの後遺症を減らすために
岡庭豊:病気が見えるvol.8腎・泌尿器第1版.メディックメディア
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