頚椎症性脊髄症のリハビリ

脊椎疾患

頚椎症性脊髄症について

脊椎の内”頸椎”が変形することを「頸椎症」または「変形性頸椎症」と言い、頸椎の変形によって”脊髄”が圧迫されて神経症状が出現すると「頚椎症性脊髄症」となります。

頚椎症性脊髄症とはどんな病気? | メディカルノート (medicalnote.jp) より引用


「変形性頸椎症」は病気ではなく、加齢によるものです。

また、日本人は欧米人に比較して脊柱管が狭いため、症状が出現しやすいと言われています。

頚椎症性脊髄症の疫学

・好発年齢は50代
・男女比は2:1で男性が発症しやすい
・好発部位はC5/C6、次いでC6/C7の中下位頸椎に多く発症しますが、
 高齢者ではC3/C4、C4/C5などの高位で発症することが多く、これらが約80%を占めています
→これは変性が進行して中下位頸椎の椎間可動域が失われることや、胸椎後弯の進行に伴い、C3/C4やC4/C5の高位にストレスが集中して不安定性が生じるためと言われています。

症状

症状の自然経過として脊髄症状は脊髄中心部から始まるため、上肢の痺れや痛みが出てくることが多いです。

そして徐々に後側索症状が強くなり、下肢の痙性麻痺などの症状が出てきます。

さらに進行すると前側索症状が出てきて、下肢の温痛覚障害が出現してきます。

ガイドラインでは症状の進行について下記のように述べています。

頚椎症性脊髄症の初期症状は両手指のしびれと歩行障害であり,それぞれ64%,16%とした報告がある9).本症では下肢の筋力低下を伴うことは少なく,むしろ痙性歩行や失調性歩行を訴える

頚椎症性脊髄症のガイドライン.田中ら,岡山医学会雑誌 第122巻 April 2010, pp. 67-71 より引用

評価

頚椎症性脊髄症では、上肢において損傷高位の節支配の筋の腱反射は低下し,それより下位の髄節支配の筋の腱反射は亢進します。
 →ホフマン徴候:陽性(感度は58%,特異度は78%)
  
・痙性歩行が出現している場合
  →バビンスキー反射:陽性、 足クローヌス:亢進 などがみられる。

・失調性歩行がある場合
  →ロンベルグ徴候:陽性(閉眼によってふらつき↑↑

・手の巧緻性障害も特徴で、手指の素早い把握動作とその解除や内転、外転動作が障害される
  →myelopathy handと呼ばれる


・客観的指標としては、下の二つがある
  ①finger escape sign
    →小、環、中指の内転および伸展の障害により5段階に分類
  
  ②10秒テスト
    →10秒間に20回以下しか手指の把握動作とその解除ができなければ異常

・重症度の評価には日本整形外科頚髄症治療判定基準(JOAスコア)が採用されている

治療

頚椎症性脊髄症の発症因子として静的因子(骨の変形による圧迫)動的因子(頸椎の不安定性)が関与しており、これらによる髄内血行障害も関与しています。そのため、治療法も静的因子と動的因子の除去を目的としてます。

・保存療法
頸椎カラーによる装具療法は動的因子を除去することを目的に処方されます。
薬物療法としては、消炎鎮痛剤、ビタミンB12、筋弛緩剤、抗不安薬、プロスタグランディン製剤、ステロイドなどがあります。


・手術療法
歩行障害、手の巧緻性障害などの脊髄症状が進行性あるいは長期に持続する場合は手術療法が適応になる場合があります。

①椎弓形成術
→最もポピュラーな術式。椎弓を切除・拡張して圧迫を除去する。特徴として、多椎間において頚椎症性脊髄症が起きているときに対処しやすくなるため、病変が多椎間に亘っている患者に適応される

②前方除圧固定術
→頸の前側から椎体を削る方法。椎体を削ることによって圧迫を除去し、その後前方から人工骨や金属製プレートで固定する方法。椎弓形成術の適応外の患者に選択され、メリットとして前方からアプローチするため筋を侵襲せずに骨棘を削るため出血も少なくなることがあげられる。

③後方除圧固定術
→椎弓形成と同じように頸の後ろ側から椎弓を開いて神経の圧迫を取り除いて、圧を取り除いた後にスクリューを用いて椎体を固定する方法です。神経圧迫因子だけでなく頸椎不安定性(頸椎後弯など)も合わせもっている患者に対して行われる方法。

禁忌

日常生活での禁忌は、顔を下あるいは上に向いている状態を長時間保つことです。

術後は頸部を過度に動かすことは禁忌です。
(頸部屈曲、左右側屈、回旋)
生活動作では、前かがみになる姿勢や、座位・立位で猫背になることに注意が必要です。

前方あるいは後方除圧固定術を実施した後にこれらの動作をすることでルーズニング(固定用のピンがゆるくなってしまうこと)を起こしてしまう危険があります。

リハビリプログラム

頚椎症性脊髄症に対するリハビリとして、現状エビデンスの高い介入方法は確立されていません

そのため、リハビリとしては疼痛や麻痺などで生じる二次障害にアプローチする必要があります。
手指のしびれで食事や整容能力が低下していれば補助具の使用を検討したり、
痙性麻痺により歩行障害を呈していたらストレッチと装具を使用したりしていきます。

術後は安静度に沿って離床を促し、疼痛に応じて手指動作訓練や歩行訓練など実施します。

まだ症状が軽い場合、頚椎症性脊髄症を予防するように動作指導など実施することも重要です。
頸椎の生理的前弯が失われた「ストレートネック」の状態では頚椎症の発症リスクが高くなります.
ストレートネックは胸椎の生理的後弯が減少された姿勢に多く、上位胸椎の後弯を下位頸椎が代償していることで生じると推測されます。
そのため、リハビリ治療としては下位頸椎伸展を引き出すこと、下を向くときに胸椎から屈曲するようにするなどがあげられます。

参考文献

参考:頚椎症性脊髄症とはどんな病気? | メディカルノート
参考:頚椎症性脊髄症の手術 | メディカルノート
参考:頚椎症性脊髄症|日本整形外科学会
参考:頚椎症性脊髄症の診療ガイドライン

文献
参考:頚椎症性脊髄症のガイドライン.田中ら,岡山医学会雑誌 第122巻 April 2010, pp. 67-71
参考:頚髄症に対する理学療法評価項目とその判定基準.樋口ら,理学療法科学 22(4):533–539,2007

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