どうして膝屈曲時に膝後面外側に疼痛が生じるのか
膝関節障害のある患者さんをリハビリしている際、膝を屈曲していくと最終域で膝後面外側(大腿二頭筋遠位付近や膝窩部など)に疼痛を訴える場合が多くあります。
このような場合はどの組織のどんな障害により疼痛を惹起しているのでしょうか?
大腿二頭筋と腓腹筋外側頭の伸張性、滑走性の低下
まず考えられるのは大腿二頭筋の停止部と腓腹筋外側頭の起始部の伸張性、滑走性の低下です。
両筋の伸張性と滑走性が低下していると、膝屈曲最終域にて大腿骨外側顆と脛骨外側顆によって両筋が挟み込まれ、疼痛を惹起します。
治療方法
大腿二頭筋停止部のモビライゼーションをします。伏臥位または背臥位で膝関節屈曲60度に保ち、筋を弛緩させた状態にし、疼痛部位に対して短軸方向にストロークします。
最終屈曲位での膝内旋運動制限
次に考えられるのは、膝最終屈曲位での膝の内旋運動制限です。
最終屈曲位において、脛骨は大腿骨に対して前方移動することでインピンジメントを防いでスムーズな屈曲を可能にしていますが、脛骨の前方移動が制限されると脛骨後面の軟部組織(外側半月板)が挟み込まれて疼痛を惹起してしまいます。
特に外側でこの脛骨前方移動運動(膝の内旋運動)が阻害されることが多いです。
治療方法
膝屈曲時の大腿骨に対する脛骨の過外旋が疼痛の原因となっているため、膝屈曲時に脛骨の内旋運動+前方移動を促すことで疼痛が改善されていきます。
脛骨神経周囲の脂肪体の硬化や滑走不全
さらに考えられるのは、膝窩部中央を走行している脛骨神経とそれを包んでいる脂肪体の硬化・滑走不全による膝屈曲制限です。
脛骨神経周囲の脂肪体に硬化や滑走不全があると、膝屈曲最終域において膝窩部中央に疼痛を訴える場合があります。
治療方法
膝窩中央部のモビライゼーションが必要で、脛骨神経周囲の脂肪体や筋膜が弛緩する膝屈曲約60度で行います。肢位は伏臥位で、疼痛部である神経の走行に対して短軸歩行にストロークします。
これらのストローク後に膝の屈伸運動を実施していくことで神経周囲の脂肪体の柔軟性が高まって疼痛が改善していきます。
参考
参考文献
園部俊晴:関節可動域.運動と医学の出版社.2023.
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